奥田 奈那絵(大阪モード学園)
大人らしく真っ当に生きていると、ふと心が息をしていないと感じる瞬間はないでしょうか。
これは「わがまま」と「クラシック」の融合です。
スーツの思い切ったシルエットは押さえつけられていない心の自由な動きをイメージしました。
胸元の花は、自分の内側から溢れる自分の素直な気持ちや心の躍動を表現するためにあしらいました。まるで素肌のように、他人には触れられない(触れられるべきではない)領域であることを表現しています。
また、型にはまった普遍的なイメージのあるスーツだからこそ、そこへ大胆に違和感のある形を取り入れることで自分を押し殺す必要はなく、実は伝統はやわらかくてしなやかで、少しずつ変わっていくものなのだというメッセージも込めています。
メイクは、モデルの力強い挑戦的な視線をより鋭く、印象的に見せるためにピュアだけど媚びない真っ白なアイシャドウを選びました。
クールな雰囲気の漂うメイクに対して、いきいきとした心のように動かしたヘアで遊びをつくり、愛らしさのあるバランスに仕上げました。
ヘアと衣装がどちらも黒で色数を抑えているため、この不思議なシルエットがより際立ってくれています。
スーツに身を包んだままで、本当の気持ちを解き放ってあげるという模範的な大人らしさと、自分の心に従うことの共存こそが「わがまま」と「クラシック」の融合というこの作品のテーマです。
個性を内に秘めて周りに合わせて生きることは、少し窮屈にも感じられますがそれ自体は悪いことではなく、
むしろそういった大人としての「普通」が自分の中にも流れているからこそ、「自分らしい」自由な感性に宿る美しさに気付くことができるのだと私は思っています。